その店は郊外の道沿いにあった。
小さな店である。
その人気のほどは、土日240食、平日120食という凄まじさで、11時に開店し、12時40分にはには無くなる日もあるという。
高知には失礼だけど、ここは香川かと思うほどの加熱人気である。
しかも多くが地元客だという。
やはり高知は、隠れたうどん県なのである。
いや観光客に頼っていない分、自立したうどん県といってもよいかもしれない。
さあ店内に入ってみよう。
うむむ。
そそられるメニューが数多くあるぞ、釜玉にぶっかけ、きつねうどんにざるうどん。肉うどん、いや肉ぶっかけっていうのにも惹かれるなあ。
散々炭水化物を食べてきたのに、「うどんは別腹」と言い張る別の自分がいる。
結局、まずは麺の味を確かめなきゃと、「ざるうどん」を頼み、出汁の味わいも確かめなきゃねと、「冷やしかけうどん」を頼み、やはりこここは基本を味わなくちゃと「ぶっかけ」も頼んでしまった。
まずざるから行く。
つるると口に登ってくるうどんは、唇あたりがいい。
滑らかで気持ちがいい。
噛めば柔らかいが、芯に歯を押し返すような弾力がある。
表情や言葉遣いは柔らかいが、その実芯はしっかり者の女性のようである。
20数回噛むとようやくうどんは口からのどへと落ちていく。
つるる。つるる。
止まらない。
お次は、冷やしかけである。
薄茶のつゆの中で白く輝く姿が、ちょっと艶かしい。
うん。これもいいぞ。
いりこ出汁を使った香り高く、しぶといが綺麗な味のつゆがおいしい。
いりこ出汁はややもすると野暮ったくなるが、丁寧にとられているせいか、後味に雑味がなく、品がある。
そんなつゆをからめながら、うどんが口に滑り込んでくる。
噛めばほんのり小麦の甘い香りがした。
続いて、ぶっかけといってみよう。
うむこれは、醤油かけ汁の濃い味が、うどんの淡い甘さを引き立てている。
まいったなあ。
またツルツルと入っていくではないか。
麺は10分茹でるのだという。
時間をかけて茹でて糊化した、しぶとさのあるうどんだと思った。
こいつには揚げたてのとり天やちくわ天が合う。
カリッと音を立てて天ぷらをかじり、ツルルとうどんをすする。
幸せだなあ。
変わった店名だが、土佐弁の「そうながよ」(そうなんだよ、の意)の「ながよ」を逆にしたのだという。
高知出身の店主は少し変わっていて、うどんはアメリカの丸亀で修行したのだという。
アメリカ人にも土佐弁を教え仕込んだという高知愛に富んだ方である。
なんでも月2回は太麺をやる日があるという。。
そうと聞いたらまた来なくっちゃ。